"Javaのサポートポリシー変更等に関する技術レポート" に意見してみた
実に2年ぶりのブログを書いてみます。ついでなので、はてなダイアリーから移行してみました。
Javaのリリースサイクル変更に関連して、一通り情報が出揃ってきました。 一部では日経xTECHなどで相変わらず酷い記事を量産して不安を煽り立てていますが、Javaは今も無償であり、Oracle JDK/JRE以外にも様々な選択肢があることは今更言うまでもありません。
さて、日本では政府CIOがまとめた標準ガイドライン群があり、官公庁の情報システム向けの指針を提示しています。 この中に技術レポートとして "Javaのサポートポリシー変更等に関する技術レポート"1があります。 "2018年4月時点の情報に基づき" と記載されていますが、無償で利用するための選択肢がOracle OpenJDKについてしか触れられていないように見えます。
- 2019年3月28日に改訂版がリリースされ、AdoptOpenJDKやクラウド上のサポート(AWS+Amazon CorrettoやAzure+Azul Systems)など追記されました。
各種ガイドへのご意見はこちらまでお願いします。 内閣官房 情報通信技術(IT)総合戦略室 E-Mail:i.it-dashboard_atmark_cas.go.jp
※迷惑メール防止のため、atmarkは@に置き換えてください。
とのことだったので、今更感はありますが、以下の通り意見を出してみました。
内閣官房 情報通信技術(IT)総合戦略室 ご担当者様 お世話になります。山田と申します。 https://cio.go.jp/sites/default/files/uploads/documents/technique_report_java.pdf こちらで掲載されているレポートについて意見したく、メールを差し上げました。 5月に本レポートが発表されてから、様々な動きがあり、内容が古くなっていると 見受けられますので、改訂をいただきたく存じます。 具体的には、[3 サーバー環境向けJavaへの対応] の [3.3 対応方針] (P5)において、 有償サポートもしくはOracle OpenJDK(無償だが半年サイクル)の選択肢のみあるような 書き方がなされておりますが、無償であっても次のような複数の選択肢が存在します。 a) AdoptOpenJDK (MicrosoftやIBMなどがスポンサー) b) Zulu Community Builds (from Azul Systems) c) Amazon Corretto (from AWS, 現時点ではプレビュー版) これらにはいわゆるテクニカルサポート(ベンダーの問合せ対応)は含まれませんが、 LTSでの更新版(アップデート)は、概ね4年以上は提供される見込みです。 これらの無償版を利用する選択肢を 3.3→1)→(2)(3)に加えていただきたく存じます。 ※実際のところ a) b) については、本レポートが発表される以前から公表されており、 選択肢として当初から加えるべきであったと考えております。 なお、それ以外にも用語の面で、"Java"とOracle JDK/JREを同一視していたり、 "OpenJDK"がOracle固有のバイナリのみを示すような書き方がなされていますが、 これらも参考資料をもとに、より正確中立な書き方をなされることも検討ください。 ■参考資料 Software Design 2019年1月号 - 第2特集 https://gihyo.jp/magazine/SD/archive/2019/201901 各JDKベンダの動向を知ってJava 11に備えよう https://gihyo.jp/news/report/2018/10/0501 「Java is Still Free」-Javaのサポート問題へ終止符、迎える4つの進化 https://codezine.jp/article/detail/11258 JDK、Oracle JDK、OpenJDK、Java SEってなに? https://qiita.com/nowokay/items/c1de127354cd1b0ddc5e JDKの長期商用サポート(LTS)の提供ベンダー比較(無償利用についても言及あり) https://qiita.com/u-tanick/items/bb166929a58a4c20bb88 Javaのサポートについてのまとめ https://qiita.com/nowokay/items/edb5c5df4dbfc4a99ffb なお、上記の参考資料は、民間Javaコミュニティの有志にてまとめられたものであり、 本レポートの [4 参考情報へのリンク] として記載されているOracle社のみの情報より、 公平中立性が保たれていると考えております。 また、いくつかの参考資料からリンクされていますが、世界各国のJava Championが まとめた「Java is Still Free」もご確認いただければと存じます。 (英語版) https://docs.google.com/document/d/1nFGazvrCvHMZJgFstlbzoHjpAVwv5DEdnaBr_5pKuHo/edit (日本語版) https://docs.google.com/document/d/1HtUnuAkUEDGL2gwUOkrDrmLe_zrD6wpAyqYBZxRmHv4/edit 以上、よろしくお願い申し上げます。
xTECHなども、この政府CIOから出されているレポートに影響を受けている可能性もあるため、少しでも誤解や偏見をなくしていければと思います。
なお、個人的な話として、Oracle ACEは今年卒業しましたが、今後もJavaコミュニティに微力ながら貢献できればと考えています。 一部の方から、先日 "OpenJDK警察"との称号(?)を賜りましたが、今回の意見はその活動の一環とも呼べるかもしれません。